はじめに
こんにちは、SHOJIです。
私たちはAIに対して「正しく理解してほしい」「正確に答えてほしい」と期待するものです。でも、ふとこんなことを考えました。
逆に、AIが“誤解する”ことを許してみたら、何が起きるんだろう?
人間同士の会話でも、誤解やすれ違いが新しいアイデアを生んだり、思わぬ面白さを生んだりすることがありますよね。
それは時に、偶然の産物だったり、誤認から生まれる発想の飛躍だったりします。
そこで今回は、あえてChatGPTに「誤解させてみる」実験をしてみました。普段は「できるだけ正確に伝える」ことを意識して使っているChatGPTに対して、わざと情報を省略したり、曖昧な言い方をしたり、変な比喩を使ったりして、その反応を観察しました。
この記事では、私が行ったいくつかの実験の内容と、そこから見えてきた“AIと誤解”の関係性について考察してみたいと思います。そして、誤解から生まれる創造性や、AIとの新しい付き合い方についても探っていきます。
実験その1:「曖昧な指示」をわざと投げてみる
最初の実験は、あえて意味の幅が広い曖昧な表現を使って、ChatGPTがどう反応するかを見てみました。
たとえばこんな質問です:
「軽いノリでお願いします」
この一言、私たち人間なら文脈で判断できますが、AIには難題です。
ChatGPTは、“軽いノリ”の意味をなんとか推測しようとしました。その結果は以下のようなものでした:
- カジュアルな言葉づかいになった
- 絵文字を入れてきた
- 語尾が柔らかくなった
つまり、ChatGPTはこの指示を「文体のトーン」として解釈したようです。日本語の「ノリ」という言葉にはテンション、冗談、空気感などいろいろな意味がありますが、AIはまず“外形的な文体”から入るようです。
でも、私が内心で期待していたのは「ちょっとふざけたユーモア」や「皮肉混じりの言い回し」でした。そのため、少し真面目すぎる回答になってしまい、ズレが生じました。
ただ、この“ズレ”こそが、今回の実験の醍醐味でもあります。
ChatGPTの“受け取り方”を観察することで、こちらの表現がいかに曖昧だったかに気づくことができました。
実験その2:「突飛な比喩」を使ってみる
次は、ちょっと変な例えを混ぜてみました。意図的に意味不明気味な比喩を使い、ChatGPTがどのように解釈するかを見る実験です。
「これはつまり、冷蔵庫の中でパーティーが始まるような状況ですね?」
普通なら「意味不明」と返されそうなこの比喩。でもChatGPTは意外なほど真面目に考えてくれました。
回答の一部:
「つまり、静かで閉じた環境の中で、突如としてにぎやかな変化が起こることを指していると解釈できます」
ここで私が気づいたのは、ChatGPTは「意味が曖昧でも無理にでも筋を通そうとする」傾向があるということです。
それは、言い換えれば“創造的な解釈”をしてくれるということでもあります。
本来、意図していなかった解釈が返ってきたとしても、そこから自分が逆にインスピレーションを得ることがある。これは人間のブレストと非常に近いプロセスです。
実験その3:「文脈を省く」チャレンジ
次に試したのは、意図的に文脈を削ぎ落とした質問を投げるというものです。要するに「いきなり質問」してみるという実験です。
「これはどう思いますか?」
文脈が一切ないこの問いに、ChatGPTはどう答えるか?
ChatGPTの返答:
「ご質問の内容が曖昧ですが、もし『これは』が前述の件を指しているのであれば...」
この返答を見て、「AIって“空気を読む”ようなこともやろうとするんだ」と驚きました。
もちろん、本当の意味で空気を読んでいるわけではありません。文脈補完アルゴリズムが“ありそうな前提”を引っ張ってきて補完しているわけですが、それでも「人間っぽい気づかい」を感じてしまうのは不思議なものです。
ただしやはり、「文脈がないと困る」というのがAIの本質でもあります。
それでも“困ったなりにがんばって答えようとする”姿勢には、どこかAIの誠実さのようなものを感じました。
考察:「誤解」は創造の種になる?
今回の実験で最も感じたのは、「誤解が生む面白さ」です。
人間同士でも、誤解がきっかけで新しい視点が生まれることがあります。
AIも同様で、以下のような効果があることが分かりました:
- 曖昧な表現を投げることで、予期せぬ角度の返答が返ってくる
- 意図しない方向に話が進むことで、思わぬヒントが得られる
- 想定外の解釈が、自分の問いかけを見直すきっかけになる
特に創作やアイデア出しの場面では、「誤解させる」という視点が有効に働きます。
もちろん、実用的なビジネス文書や命令系統では誤解は禁物です。しかし、試行錯誤のプロセスや発想の転換が求められるシーンでは、誤解はむしろ“材料”になりうると感じました。
おわりに:AIに間違える自由を
AIに対して、私たちはつい「正解を出してほしい」と期待してしまいます。
でも、ChatGPTとの対話を通じて得られる価値は、正解だけではありません。
誤解、すれ違い、想定外の反応。
それらはすべて、人間とAIがともに“考える”ためのきっかけになります。
ChatGPTとのやりとりを「正誤判定」や「検索の代替」ではなく、「共創」や「実験」として楽しんでみる——それが、AIとの関係をもっと柔軟で、創造的なものにしてくれると思います。
たまには、AIに“間違える自由”を与えてみてください。
その先に、思いがけない発見が待っているかもしれません。